番犬男子
そう、かな。
そうだったらいいな。
「だーかーらー」
「うにゅっ!?」
「そうしょげてんなって!な?」
あたしの両頬を遊馬の両手で強く押され、グリンッと無理やり遊馬のほうに顔を向けさせられる。
屈託のない笑顔に、自然と心が温かくなる。
そうだよね。
非力な自分を責めて、泣いて、落ち込んでばかりじゃダメだよね。
「遊馬の笑顔を見たら、元気になった」
「!」
「ありがとう」
遊馬の手を離しながら微笑むと、遊馬は一瞬驚いた顔をして、すぐ頬をほころばせた。
「そっか。……そっか!」
嬉々として弾んだ声が、そよ風に紛れる。
遊馬の耳たぶにぶら下がっている、真っ赤な宝石を施したピアスがゆらゆら揺れた。