番犬男子
「遊馬?」
笑顔がより輝きを増して、あたしは首を傾げる。
どうしたの?
「母さんも、お前とおんなじことを言ってくれたんだ」
「え?」
「『遊馬が笑うと、元気になれる』って」
遊馬のお母さんが?
その言葉が本当に嬉しかったんだろうな。
「俺の母さんさ、俺が小5の時に心臓病で死んじまったんだ」
突然投下された事実に、声がつっかえた。
こういう時、なんて言えばいいんだろう。
あたしが悩んでる間にも……いや、悩んでいたからこそ、だったのかもしれない。
遊馬は喜色を浮かべたまま、話を続けた。
「俺、昔からやんちゃでバカばっかりやっててさ」
「うん」
「そんな俺を母さんは軽く叱って、その後はいつも必ず笑ってた」
「うん」
「ある日、母さんが言ったんだ。『遊馬が笑うと、元気になれる。だからずっとそのまんまでいてね』って」