番犬男子







「ねぇ、ちょっとあれ見てよ」




クレープ屋のそばで、他人が見たらまるで恋人同士がするかのような仕草をしているあたしと遊馬。


仲が良さそうなそのシーンを、双雷ファンの女子たちが遠目に目撃してしまった。




「何あの女。遊馬さんに媚び売って、キモー」


「なんであんなブスが遊馬さんと一緒にいるの!?」



女子たちの中の1人が、見覚えのあるあたしの顔に「あっ」と思い出す。



「あの女……」


「知ってるの?」


「確か、前に雪乃さんにも話しかけられてた」


「はあ!?何それ!」



抜け駆けして取り入ってるように映っているらしいあたしに、女子たちの殺気じみた黒い嫉妬心が一心に向けられる。


肉食系乙女な女子たちの盛大な勘違いを止められる、勇気ある者など、ここにはいない。




「あのブス、遊馬さんだけじゃなく雪乃さんにまで手ぇ出してんの!?最低!」


「振り回されてる遊馬さんと雪乃さんが可哀相だよ……!」


「私たちで懲らしめてやろうよ」


「いいね、それ」




あれ?


今なんか、背筋がゾクッとした。

気のせいかな。




双雷ファンの女子たちが、あたしを牽制しようと企む。


そのことに、あたしも遊馬もクレープがあまりに美味しすぎて気づけなかった。




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