番犬男子
□ 好き嫌い
10月になり、寒さが際立ってきた。
そんな、ある平日の朝。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃーん!!」
「朝っぱらからうっせぇな」
朝食を食べ終えそそくさと玄関で靴を履いてるお兄ちゃんに、あたしもそそくさと駆け寄る。
今日こそは逃がさないよ!
相も変わらず学ランが世界1似合うお兄ちゃんの腕に、ギュゥ、としがみついた。
「くっつくな、離れろ」
「先に行かない?今日こそ途中まで一緒に行ってくれる?」
上目遣いでお願いすれば、お兄ちゃんの目がサッと逸らされる。
「じゃあ離さない!」
お兄ちゃんはいつも、あたしより先に家を出て登校する。
もちろん、わざと。
くどくつきまとうあたしを避けてるんだ。
あたしは何度も「一緒に行こうよ!」って誘ってるんだけど、お兄ちゃんは全く聞く耳を持たない。