番犬男子




あたしはお兄ちゃんの腕を解放し、靴を履く。



「行ってきまーす!」


「……行ってきます」



上機嫌な声と不機嫌な声が、同時に玄関に響いた。


おばあちゃんが居間から顔を覗かせる。



「行ってらっしゃい。気をつけるんじゃよ」


「はーい!」




そして、あたしとお兄ちゃんは家を出た。





お兄ちゃん、歩くスピード速すぎ。


あたしほぼ小走り状態なこと、気づいてないのかな。



追いついたと思ったら遠ざかってを繰り返し、お兄ちゃんと並んで歩けたのは今のところたった30秒程度。



1分にも達してないってどういうこと。


お兄ちゃんとの記念すべき初登校が、ランニング登校とかあたし嫌だよ!?




もっとお兄ちゃんと登校できる幸福感を味わっていたいのに。



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