番犬男子
お兄ちゃんに嫌がられて、怒られて、壁を作られても。
そのせいで、傷ついても。
あたしは、しつこくお兄ちゃんのそばにいて、妹の存在を思い出してくれる瞬間をずっと待ってる。
それでもお兄ちゃんは、妹のあたしを遠ざける?
いつまで経っても、らしくなくまとわりついてこないあたしに気がついたお兄ちゃんが、ふと立ち止まった。
「千果?」
ああ、もう。
こういうところが無自覚なんだ。
距離を詰めさせてくれないのはそっちなのに、離れされるあたしを放っておかずに優しくしてくれる。
ずるい。
嬉しさと苦しさで変な表情になってるってわかってる。
こんな表情をお兄ちゃんに見せたくなくて俯いた。
どうして、あたしは。
お兄ちゃんの前だと、こんなにも弱くなってしまうんだろう。