番犬男子
反対に、お兄ちゃんはすぐ目を泳がせた。
「……その聞き方はずりぃだろ」
くしゃり、と短い前髪をかきあげる。
より鮮明に見える額の傷痕が、あたしの鼓動を刺激した。
うん、ごめん、そうだよね。
ずるいってわかってて、そう聞いたの。
地面に転がされたお兄ちゃんの恥じらいを帯びた視線が、渋々あたしの元に戻される。
「嫌いじゃねぇよ」
ため息まじりに呟かれた返事の後、骨ばった手があたしの頭を包んだ。
え……?
最初、この温もりが現実だと信じられなくて、呼吸すらまともにできなかった。
「ほ、本当?」
「ああ」
恐る恐る聞き返したら、お兄ちゃんは1秒の間もなく頷いてくれた。
優しく頭を撫でられ、泣きたくなった。