番犬男子
助けてくれるなんて、想像できなかった。
だって、幸汰はあたしを敵視していたし、
悪化したら双雷に本当に迷惑をかけてしまう可能性のある女子同士の闘いに、幸汰が自ら手を出すとは思えなかったんだ。
『まあ、番犬としてはまだ警戒を解いてねぇかもしんねぇけどさ。あいつはあいつなりにお前のこと気に入ってると思うぜ?』
尾行ゲーム中に言われた、遊馬の言葉が脳裏を過る。
知らない。
そんなの、知らない。
幸汰の好意なんか、知らない。
――知らな“かった”。
「なんでだろう、なんか、体が動いちゃった」
幸汰は曖昧にそう応え、ふにゃり、困ったように微笑んだ。
左頬に添えてるあたしの右手に、おもむろに幸汰の左手が重なり、あたしの心臓が甘く高鳴る。