番犬男子
本を読んでいたお兄ちゃんが、あたしのキラキラオーラ満載の視線に気づいて、本に集中できずげんなりした。
「セイちゃんと、何かあったの?」
「ピンポーン!」
雪乃、大正解!
幼い子どもみたいにはしゃぐあたしを、雪乃は「あらあら」と微笑ましそうに見つめる。
さっき、すっごくいいことがあったの。
おかげで、朝からテンションが高い。
「誠一郎、何したんだよ」
「何にもしてねぇよ」
「嘘つけ!あれはどう見ても何にもされてねぇ顔じゃねぇだろ!」
黒のソファーから立ち上がってあたしを指差す遊馬に、お兄ちゃんは心当たりがないと言わんばかりに眉をひそめる。
そんな朝から大ボリュームの声で喚【ワメ】く遊馬の隣で、稜はスマホゲームをしながら無関心を徹底していた。
「何があったの?チカちゃん」
「ふふふ、あのね!」
お兄ちゃんにとっては些細なことだったのかもしれないけど。
あたしにとっては、最高レベルでいいこと。