番犬男子




幸汰は、あたしに責めてほしかったの?

違うでしょ?


あたしだって、「何もせずに見てただけなんて最低!」って偽善者ぶって怒るつもりないし。



自分が不甲斐ないと後悔することは、悪いことじゃない。



「助けようと思うことすらしないで、見て見ぬフリして通り過ぎる人だっている。そういう人たちと比べたら、幸汰はまだマシなほうなんじゃない?」




自分の行動には、自分自身できちんと責任を持つことが大事なんだ。


責任が持てない人に余計なアクションを起こされても、後々面倒なことになりやすくて困る。



極論的で正当化はできないが、そういう意味では、責任が持てない人は見て見ぬフリをするのが選択肢の1つとして有効なのかもしれない。




「それに」と続けて話す。



「この間、集団リンチからあたしを助けてくれたじゃん。幸汰がちゃんと成長してる証でしょ?」



今度は後悔を払拭して、あたしを守った。



今の幸汰には、強い力がある。


去年とは違う。




「成長……したのかな、僕」


「うん、してるよ。あの時の幸汰もかっこよかったよ。お兄ちゃんには負けるけど」



あたしが笑顔で褒めると、幸汰の顔が見る見るうちに赤く染まっていった。



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