番犬男子
お互いに赤みが引いていき、落ち着いてきた頃合いを見計らって、幸汰は口を開いた。
番茶から泳ぐ湯気は、薄まっていった。
「総長に憧れて、僕はすぐ双雷に入った。わかりやすく総長に懐いてたから、総長も僕を弟みたいに可愛がってくれてた」
……弟みたい?
ちょっとイラついたけど……しょうがない、今はスルーしておいてあげよう。
次はないぞ、小僧。
「日に日に憧れが膨れ上がって、侍や双雷の悪い噂を聞くと、憧れを汚されてるみたいで腹が立った」
柔らかかった幸汰の表情に、黒さが帯びて、番犬の形相を垣間見る。
幸汰は心から、お兄ちゃんを尊敬し、双雷を大切にしてるんだね。
「それをきっかけに、始末屋としての活動を始めたの?」
「ああ。影で侍や双雷を悪く言う敵を、片っ端から殺るようになった」
さりげなく物騒なワードと殺気を出さないでくれる?
フツーに恐ろしいし、ピリピリしてて痛いんですけど。