番犬男子
どうしてお兄ちゃんは、こんなにかっこいいの!?
興奮のあまり、幸汰の腕をバシバシ叩く。
幸汰は痛がりながらも当時のことを回想し、にへら、とあどけなく微笑んだ。
「それからだよ、総長の指示で本格的に行動することになったのは」
「番犬の名はいつ頃から?」
「総長が僕を幹部に任命してくれた今年からかな。僕にひどい目に遭ったやつらが、僕のことを『侍に忠実な番犬』だって皮肉っぽく言ったのが始まりだった気がする」
番犬としての双雷を陰ながら守った功績を評価して、お兄ちゃんは幸汰を幹部に昇格させたのだろう。
憧れってすごいなあ。
あたしもお兄ちゃんを慕ってるから、幸汰の気持ちは嫌ってくらい共感できる。
苦手意識があっけなく溶けていく。
「話してくれてありがとう。でも、これだけは言っとく」
「え?」
「お兄ちゃんのことが一番好きなのは、このあたしだからっ!」
お兄ちゃんもあたしが好き、とはさすがに嘘でも言えなかった。
全ての記憶が蘇っても、言えない。
お兄ちゃんが言ってくれるまでは。