番犬男子
『嫌いじゃねぇよ』
以前ずるい質問に答えてくれた、お兄ちゃんの想いを想起する。
今は、それで、十分。
記憶を取り戻して、表裏一体の想いが変わっても、大丈夫。
「わかった?」
自分がお兄ちゃんの一番だなんて、自惚れないでよ?
両頬を膨らませば、幸汰は愛しそうに目尻を下げた。
「はいはい」
「『はい』は1回!」
返事はなく、笑みが深まるだけだった。
何その、僕は大人ですから譲ってあげますよ感。
なんかムカつく。
……でも。
不思議と、あたしも微笑んでいた。