番犬男子
□ 消えない傷
気づけば、あたしと幸汰がせっかく淹れた番茶は、とうに冷めてしまっていた。
喋りすぎたんだ。
「冷めても飲めなくはない、けど……」
「美味しさ半減するよね?」
「う、うん」
苦笑いされ、がっくりとうなだれる。
失敗した。
幸汰の赤面にパニクって油断したせいだ。
幹部室に行ってから、幸汰の話を聞けばよかった。
美味しくないお茶をお兄ちゃんに飲ませたくない。
ここはもったいないから、あたしが責任持って飲み尽くします。
あたしは、残りの番茶全てを無念ごと、やけ食いならぬやけ飲みした。
「ち、千果さん!?飲みすぎはよくないよ!」
幸汰の忠告を無視して、次々飲み干していく。
おかげでお腹はたぷんたぷんだ。