番犬男子




10年はあまりにも長い。


その空白は、簡単には埋められないだろう。



だからって、何もせずに待っているだけなんて、まっぴらごめんだ。




あたしは、勢いよく立ち上がった。


帰ってこないなら、あたしが行く。



「あたし、ちょっと出かけてくる」


「え?」



おばあちゃん。

せっかく来たのに、ゆっくり話せなくてごめんね。


だけど、どうしても、今すぐ“彼”に会いたいんだ。



この気持ちは、誰にも止められない。




おばあちゃんは、最初は驚いたが、すぐに表情をほころばせた。



「気をつけて行ってくるんじゃよ」


「うん!行ってきます」



そう言って、カバン片手に、元気よく家を飛び出した。




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