番犬男子
「昨日の夜、“番犬”が出たんだってよ」
番犬?
なんとなく気になって、足を止める。
路地には、薄暗い影に紛れるように、成人してそうな不良が2人、壁に寄りかかりながらタバコを吸っていた。
「番犬ってなんだよ」
「お前、知らねぇの?結構前から騒がれてたじゃねぇか」
この会話は、聞いておいたほうがいいかもしれない。
“彼”と同じ不良がする噂が、どこかで役に立つ可能性がなくはない。
タバコの煙が、宙を泳ぐ。
「ほら、あの侍に付き従ってる男のことだよ」
……え?
侍?
一気にその噂に興味が湧いた。