番犬男子
僕だって、「どうして」と聞きたい。
たぶん、僕のほうが、わからないことだらけだ。
疑問が疑問を招き、絡み合う。
どうして、今年の夏休みに突然、千果さんは総長に会いに来たのか。
どうして、僕を含めたみんなは、千果さんが嘘をついていないように思うのか。
どうして、総長の妹だとはっきりしていない千果さんは、こんなに簡単に双雷に馴染み、僕たちの警戒心を薄められたのか。
どうして、総長は記憶を失ったのか。
どうして、総長は頑なに、無意識に千果さんと距離を置くのか。
どうして、千果さんはそんな総長に臆せず、笑顔で近づいていくのか。
どうして、千果さんは総長の額に傷をつけてしまったのか。
どうして、額に傷をつけた犯人が千果さんだと明かされて、総長は苦しそうにしていたのか。
どうして、僕は。
誰よりも慕っている総長が苦しんでいたというのに、元凶の千果さんを叱責するどころか、外に連れ出して一緒に逃げてしまったのか。
どうして、どうして、どうして……。
何もわからないのに、いつの間に僕は千果さんを受け入れていたんだろう。