番犬男子
この街で「侍」と呼ばれている有名な人物は、“彼”1人しかいない。
その番犬ってやつが“彼”と関係があるのなら、なおさら聞かなくては。
「双雷と侍を守るために、裏で敵を潰してる始末屋。そいつが侍にすげぇ従順らしいから、みんな『番犬』って呼ぶようになったんだ」
物騒なワードが飛び交う、不良の噂はなんとも恐ろしい。
番犬は、侍に忠実な犬、ってわけね。
一体どんな人なんだろう。
あたしはその噂を頭の隅に置いて、2人の不良に盗み聞きしていたことがバレる前に、その場をあとにした。
双雷の噂をしていたのは、あの2人だけではなかった。
繁華街のところどころで、主に女子が黄色い声で双雷のことを話している。
他にも、怖がっている者や慕っている者、ケンカ腰な者もいた。
どうやら、双雷は、あらゆる形でモテているようだ。
最強の地位に立とうと、どうしてもまとわりつく畏怖も憧れも全部背負って、真正面から闘う。
それが、双雷の在り方。
その頂点で、“彼”は何を見て、何を感じているのだろうか。