番犬男子
全部の「どうして」の答えを教えてくれなくたって構わない。
だけど、せめて僕自身のことだけは、わかっていたかった。
ゆっくり瞼を閉じた。
番犬として、脅し、忠告しなければ。
義務感で平静さを取り戻せはしなくて、本当にそれでいいのか、と揺らぎが膨れていった。
番犬の行動に疑念を抱いたのは、これが初めてだった。
また新たな「どうして」が生まれる。
つい、総長への忠誠と信頼を建前に、何もなかったと偽ってしまった。
僕は、知らない。
いつか、千果さんを戒めるために疑念を偽ったことを、後悔する日が来ることを。
その日が、そう遠くないことも。
僕は、知る由もなかった。