番犬男子
名残惜しくも電話を切り、スマホをポケットにしまう。
さてと。
連絡も終わったし、一時的に不良集団を撒いたし、ここを出て西方面でお兄ちゃんと合流しますか。
そう思ったが。
「お次の方どうぞー」
ちょうどよく順番が回ってきてしまい、列を抜けたくても抜けられなくなった。
お財布は、武器として強盗犯に投げ放ったリュックの中だから、持ち金は1円もない。
やばい、どうしよ。
うっかりしてた。
連絡をすることで頭がいっぱいで、順番が回ってくること想定してなかった。
今、列を抜けても微妙な空気になるよね。
あたしはとりあえず、メニューを見ながら空いてるレジに移動した。
レジにいたのは、同い年くらいの女子だった。
注文を聞かれ、腹をくくる。
思い浮かんだアイデアを実行するしかない!
「One smile,please」
メニューの一番下にある、0円スマイル。
日本語より英語のほうが、利益を生まないスマイルのみを注文しても、あまりグチグチ言われないと憶測して。
スマイルをひとつください、と奥の手を使ってみた。