番犬男子
初めてスマイルを頼まれたのか、それとも日本人の外見なあたしが流暢に英語で話して驚愕したのか。
店員はピシリと体を強張らせた。
「す、スマイル……英語……」
どっちもだったらしい。
無駄に緊張させちゃってごめんなさい。
店員は軽いパニック状態に陥りかけながらも、ぎこちなく笑顔を顔に貼り付けた。
お世辞にも店員として完璧な笑顔とは言えないものだったが、とても可愛らしかった。
「Oh,very cute!」
素敵なスマイルをありがとう。
発音よく感謝を伝えて、投げキッスを送って背を向けた。
雪乃を見習って優雅にファーストフード店を去ったあたしに、店内にいた人たちは魅了されていた。