番犬男子
ハッキングしたことが“彼”にバレたら、あたしの好感度はダダ下がり。
せっかく強盗犯にも負けずに買った、映画鑑賞のおともが無駄になってしまう。
そんなの、ぜーったいにダメ!!
我慢だ、我慢。
たまり場の正確な場所を明らかにしたい衝動をこらえろ、あたし。
全ては、“彼”に少しでもいい印象を与えるため。
群青に塗られた空に、淡いオレンジがうっすら混ざり出す。
時刻は、3時45分になるちょっと前。
もうこんな時間だったんだ。
暗くなる前に、たまり場に行きたい。
でも、このまま突き進んでいいの?
なんか不安になってきた。
「……しょうがない」
こんなところでぐるぐる迷っているより、誰かに聞いたほうがよっぽど早そうだ。
ここは人気が少ないから、繁華街に戻ろうかな。