番犬男子
なんとか窮地を脱し、だんだんと人気が減っていく道をたどっていく。
懸命に足と腕を振り、カラカラな喉で息を吸って、吐き出して、また吸って。
カジュアルコーデとスニーカーを選んで正解だったな。
後方から不良集団がすごい形相で、あたしを追ってくる。
もっとペースを上げなくちゃ。
日本に来て、あたしの運動能力ははるかに高くなった気がする。
繁華街をやや遠ざかり、一般人の往来はなくなってきた時。
「千果」
あたしの表情に、明るさが灯る。
お兄ちゃん……!
正面に見えたお兄ちゃんに、あたしはさらにスピードを上げて駆け寄った。
「侍……それに、他の双雷メンバーまで、なんでここにいんだ!?」
強盗犯は驚きを隠せない様子で、急ブレーキをかけた。
他の不良も、動揺して立ち止まる。