番犬男子
不意に左側から喚き声が響いた。
「おりゃあああ!!」
「うおおおおっ!!」
「はぁ……うっせぇな」
声を出して突進してくる不良2人を鬱陶しそうに軽視してるのは、耳を塞いでいる稜。
もうすぐ稜を壁際まで追いやれると確信し、不良2人の口角がニヤリと持ち上がった。
しかし、稜はそのまま壁に突っ込んで行く。
「な……!?」
勢いに乗って壁に片足をつけ、蹴るように数歩壁を走った。
そばに立つ、歩道の標識を掲げている電柱より細めの柱を、左手で掴んで。
柱を支えにして、ぐるんっと大きく体を回転させながら、空中で不良2人に回し蹴りを食らわせた。
「もう気が済んだか?」
「……っ」
地面に下りた稜は、膝をついた不良2人をきつめに睨んだ。