番犬男子




遊馬は、小さなルビーが施されたピアスを揺らしながら、目にも止まらぬ速さで不良3人との距離を縮めた。


怯んでる不良からライターを奪うのは容易い。



「ライターごときで俺を楽しませられるわけねぇだろ。正々堂々、素手で来いよ。息の根が止まる寸前まで叩き潰してやる」



本気モードになった遊馬を、落ち着かせることは不可能だ。




遊馬の危機を無事阻止できたあたしは、一部だけ注目するのをやめた。



下っ端たちも、副総長や幹部に負けず劣らず、元魁皇の下っ端たちを圧倒している。


双雷最強説も伊達じゃない。




抗争が始まってわずか10分。

20人以上もの差があった不良集団の人数は、あっという間に双雷と同じか、それ以下になっていた。





不意に、ぞくり、身の毛がよだった。



なに、今の。


双雷に有利な展開で、勝利も確実。

不安になることなんか、何ひとつない。


なのに、どうして?



なんとも言えない、この、不穏な予感は何なの?



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