番犬男子
必要な冷静さを絡め取るみたいに、またぞくりと戦慄した。
うろたえちゃダメ。
落ち着け、あたし。
どこから、何から、誰から、この予感がやってきた?
考えるな、感じろ。
ここでこそ、第六感を働かせろ。
直感の受信に何かが引っかかり、ハッとしてその方向に振り向いた。
その先では、お兄ちゃんが不良10人に囲まれつつも、息ひとつ乱さずに闘っていた。
え?
お兄ちゃんが、あたしの不安の原因?
「……違う。絶対、違う」
明白な独白を、思わず唇に這わせる。
お兄ちゃんは、あたしの知る限り、誰よりも強い人。
あたしがお兄ちゃんの強さを疑うなんてこと、天と地がひっくり返って、地球が逆回転して、人類が滅びても、ありえない。
それじゃあ、何があたしに不穏な予感を纏わせてるの?
一体、何が。