番犬男子
お兄ちゃんの周りを横目に観察する。
特に不安要素は、ない。
お兄ちゃんが闘争している不良10人も、1人に敵対する人数が10人って多すぎでしょ、とは思うけど。
あの有名な侍相手だし、そんなもんだよね。
その近くでは双雷の下っ端と幸汰も、元魁皇の下っ端と一戦を交えているけど、違和感は芽生えない。
んー、あとは、お兄ちゃんの闘ってる場所の奥から、強盗犯が忍び足でお兄ちゃんに迫って…………迫って?
気配を薄めてお兄ちゃんに近寄る、強盗犯の姿に目を瞠【ミハ】った。
あんなところで1人で何してるの?
ぞわりぞわり、と急激に不安が育っていく。
そうか。
強盗犯だったんだ。
不穏な予感の正体は。
より注意深く強盗犯を見た。
「!」
強盗犯の手にあるのは、ナイフ……?