番犬男子




認めたくなくても、認めざるを得ない。


2人は俺を、愛していないんだって。



それでも、壊れそうな心を繋ぎとめてくれていたのは、千果の存在だった。




俺がここにいたら、情緒不安定な両親を荒立ててしまうと思い、一旦手術室前を離れた。


手術が終わったら、千果に伝えなければならない気持ちを伝えよう。





手術が終了したのは、日が沈んだ頃だった。


病室で安静にしていた俺は、看護師さんに手術が成功して妹が目覚めた報告をもらってすぐ、病室を出て千果に会いに行った。




千果がいるであろう大きな個室に到着し、扉を静かにスライドさせた。


病室では父さんと母さんと、枕元を微妙に傾けさせたベッドに俯け状態で寝そべっている千果と、千果の背中を診ている医者らしき人がいた。



後にも先にも、ノックを忘れたことをその日ほど後悔することはないだろう。




手術した千果の背中は、想像以上に、ボロボロだった。


背中には継ぎ接ぎをした生々しい縫い跡がいくつもあり、肌色だったはずの皮膚は淀んだ色をしていて、呪いでも受けたかのように痛々しかった。




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