番犬男子







かすかに瞼を持ち上げ、視界いっぱいに差し込む光の眩しさに、もう一度ぎゅっと瞑る。


そして、おもむろに目を開けた。



『誠一郎?』


『……かあ、さん?』



ベッドの横で俺の顔を覗き込んでる母さんが、目の隅に入る。


キョロキョロと見回す俺に、『ここはあなたの病室よ』と母さんが教えてくれた。



病室?



『誠一郎がいきなり倒れて、千果はびっくりしていたわ。傷に障ったらどうするのよ、まったく』



後半の愚痴は、ほとんど聞き取れなかった。


母さんはなんでそんなにイライラしてるんだろう。



それに……。


俺は自分の右腕に視線を落とす。



俺、いつ右腕を骨折したっけ?




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