番犬男子
病室にいる理由もわからない。
不可解な疑問が脳裏を埋め尽くす。
答えが知りたくて考えこめば、ズキンッ、と頭が悲鳴を上げた。
『起きたなら、もう1回ちゃんと謝りに行きなさい』
『謝る?』
さあ早く、と呆れながら急かす母さんに、俺は首を傾げる。
母さん、さっきから何を言ってんの?
『誰に?』
『誰にって、千果しかいないでしょ?』
『千果?』
母さんはそこでようやく違和感を覚えて、戸惑った様子で俺を見据えた。
『母さん、千果って誰……?』