番犬男子
あたしの背中を手術してくれた執刀医に、宣告された。
鎖骨あたりから腰あたりまでに渡る、背中の大きな傷は一生消えることはない、と。
お母さんは泣いて、お父さんは憐れんでいた。
だけど、あたしは別に傷痕が残ってもよかった。
この傷は、お兄ちゃんを守れた勲章なのだから。
相反して、お兄ちゃんは辛そうに背中の傷痕を眺めていた。
『ごめん……っ』
そう呟いて倒れたお兄ちゃんの額には、傷を手当てしたらしきガーゼがテープで貼られてあった。
それは、あたしがお兄ちゃんを守りきれなかった証拠だった。
謝るのはあたしのほうだ。
お兄ちゃんの額に傷をつけただけでなく、あたしに傷が残ったことでお兄ちゃんに罪悪感を植え付けてしまった。
あたしはお兄ちゃんの心を、傷つけるつもりはなかったのに。