番犬男子




あたしは、お兄ちゃんの優しさを知っていたから、お兄ちゃんに冷たく無視されても嫌いになれなかった。



お兄ちゃんは意地悪をしてあたしを傷つけては、自分も傷ついていた。



あたしがお兄ちゃんのそばを離れれば、お兄ちゃんの気持ちも幾分軽くなったんだろうけど、あたしは大好きなお兄ちゃんのそばにいたかった。


仲良くなって、またお兄ちゃんと2人で遊びたかった。



お母さんとお父さんに、あたしたち兄妹を平等に愛してくれるよう、時に間接的に、時に直接訴えた。



けれど、お母さんとお父さんは軽く受け流して、変わってはくれなかった。




あたしのせいで狂った歯車を、あたしの手で直して、いつか家族4人が幸せになる日が来てほしかった。


お兄ちゃんが傷つくのが、どうしても、嫌だったんだ。




……なのに、あたしは。


また、傷つけた。



お兄ちゃんの弱まった心を、深く、えぐってしまった。




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