番犬男子
あたしの病室にやってきたお母さんとお父さんを見れば、2人がお兄ちゃんにどんな態度を取ったのか、一目瞭然だった。
無意識にお兄ちゃんを見限ったんだ。
お兄ちゃんは人一倍繊細で、優しいから。
自分自身を咎めて、あたしに憎まれても仕方ないと孤独を膨らませたんだろう。
あたしの背中に、傷痕が一生刻まれ続けるせいで。
お兄ちゃんを全然守れていないのに、これのどこが「勲章」?
そんなすごいものじゃない。
これはお兄ちゃんが罪に囚われる、ただの「枷鎖【カサ】」だ。
辛かった。
あたしのことなんかより、お兄ちゃんがあたしの傷のせいで苦しみ、あたしとの思い出を手放してしまったことが。
落ち着け、あたし。
喚き散らして悲しんでいても、時間が無駄に過ぎていくだけだ。
『お兄ちゃんに、会いに行かきゃ』
会いに行って、伝えたい。
この傷痕は気にしないで、と言っても無理だろうから、もっと大事な親愛の情を伝えるんだ。
傷つけてごめんね。
お兄ちゃんは独りじゃない。
あたしがそばにいるよ。
大好きだよ、って。