番犬男子
「それにしても、誠一郎にもそういう時代があったんだな~。なんでもこなせる超人みてぇなイメージがあったから、なんか意外」
「超人なわけあるか」
「同じ人間だったんだな!すげぇ親近感!」
「最初から人間だっつの。逆に人間じゃなかったら何なんだよ。意味わかんね」
どことなく晴れやかなお兄ちゃんが、目元に置いていたタオルを遊馬に投げる。
軽々タオルを避けた遊馬は、楽しそうに一笑した。
「総長が今とても強いのは、弱さに苦しんだ過去があったからだったんですね。僕、さらに尊敬しました!」
幸汰の憧れがより一層強まり、お兄ちゃんは半分謙遜していた。
あたしは、個性豊かな不良が揃う、看護室を見渡した。
あたしとお兄ちゃんの昔話に対して、十人十色のリアクションをしていて、つい笑みがこぼれる。
お兄ちゃんがお兄ちゃんらしくいられる、温かな居場所ができて。
そこには、お兄ちゃんと肩を並べている、特別な仲間がたくさんいて。
みんな、お兄ちゃんのことが大好きで。
自分のことみたいに、すごく、嬉しい。
ねぇ、お兄ちゃんもそうでしょ?