番犬男子




双雷で過ごしてきた日々にぼんやりと思いを馳せていると、ふとみんなの視線があたしに集まっていることに気づいた。


みんな、どうしたの?



「総長と千果さんの昔話を聞いて、はっきりわかりましたね」


「ええ、そうね」


「まあ、俺は聞く前からわかってたけどな!」


「遊馬、見え透いた嘘つくな。確証はなかっただろうが」



幸汰の言葉に頷いた雪乃に続いて、遊馬と稜が口論しながら同意する。



あぁ、そうか。

そうだね。


夏休みにお兄ちゃんと再会し、双雷と初めて出会ったあの時から渦巻いていた疑いに、ようやく双雷が答えを見つけた。



さあ、答え合わせをしよう。


手繰り寄せた絆の先には、何がある?



「千果」



ずっと聞いていたくなる、お兄ちゃんの透き通った声で、あたしの名前を紡がれた。


あたしは涙ぐんで微笑む。




「お前は、俺の大事な妹だ」


「うん!お兄ちゃんは、あたしの世界でたったひとりの『にーちゃ』だよ!」








手繰り寄せた絆の先には、


傷だらけになっても色褪せない、


大きな愛がある。




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