番犬男子




あたしからお兄ちゃんへの贈り物は、十字架のネックレス。


お兄ちゃんの通り名である「侍」という名を彫った十字架には、あたしの想いが込められている。



「お兄ちゃんが罪の意識に苦しまなくなって、本当の意味で強くなるその時まで、どうかこれを身に付けていて」



あたしたちは、まだまだ子ども。


これからも幾度となく弱さに嘆いて、理不尽な現実に打ちのめされてもがくだろう。



それまではきっと、十字架のネックレスが、そばにいられないあたしの代わりにお兄ちゃんの心を守護してくれる。




侍の名にふさわしい、侍魂がお兄ちゃんに灯り、“あの日”のあたしたちみたいに幼くて非力な自分を悔いてる子どもに、かけがえのない強さを導いてあげられるように。




「大切にする」


お兄ちゃんはそう言って、早速首にネックレスをかけた。



うん、思った通り。

すごく似合ってる。


かっこいいよ、お兄ちゃん。



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