番犬男子
あたしは幸汰の手から放した手を、幸汰の背中に回した。
ぎゅーっとしがみつくように、さっきできなかったハグをする。
「その2つ、約束、ね?」
頭上で笑みを漏らされる。
幸汰はあえて言葉では応えずに、あたしを抱きしめ返した。
約束するよ、と優しい沈黙を漂わせて、甘く交わす。
「破ったら――容赦しないよ」
いつかの仕返しだよ。
強気なあたしの額に、幸汰がチュッと口づける。
「千果さんこそ、約束守ってくださいよ?」
「あ、敬語!」
「ま、守ってね?」
満面の笑顔を浮かべて頷く。
よそ見なんかしない。
ていうか、できないよ。
幸汰も知ってるでしょ?
あたしの愛は、どんな名前であろうと、わがままで一途だってこと。