番犬男子





あたしは、静かに幸汰から身を離した。


幸汰とみんなに、大きく手を振る。



これで、本当の本当に、最後。




「お兄ちゃん、幸汰、みんな!またね!」



「またね、千果さん」

「絶対また遊ぼうなー!!」

「チカちゃん、また一緒にランチしましょうね」

「じゃあな」



手を振り返してくれるみんなに、背を向けた。


一生のさよならじゃないのに、なんだか泣けてくる。




「千果!」


お兄ちゃん……?



唇を噛んで涙を我慢しながら、ためらいがちに顔だけ向かせた。



「今度は俺が、会いに行くから!」



やっぱり、お兄ちゃんはずるいね。


1滴だけ涙が流れちゃったのは、内緒。



「うん、待ってる!」




そして、あたしは前に向き直して、一歩ずつ進んでいった。






あたしたちは何度でも、人それぞれ異なる“愛の形”を探して、傷つけてしまわぬように、抱きしめて守り抜く。


また大好きな人に会える、大切な瞬間を待ち焦がれながら。





<END>


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