番犬男子
しかも、“彼”は、新選組の刀を守ったことから、こんな異名で呼ばれているらしい。
――「侍【サムライ】」、と。
「会うのが楽しみだなあ」
スクラップブックの最後のページに貼ってある、現在の“彼”の写真。
左を向いている“彼”の横顔を、そっと指先でなぞる。
不良になってるって知った時は、びっくりした。
でも、不思議と、恐怖は一切感じなかった。
だって、“彼”は“彼”だ。
10年も会っていないけど、わかる。
あたしの“彼”への愛も、思い出も、全く変わらずに胸に在る。
“彼”は少しでも覚えてるかな。
覚えて……ない、だろうな。
どっちでもいい。
会えるなら、それでいい。
もう傷つけたくないから、あたしは“彼”に会いに行く。