番犬男子





「やっぱり、記憶が戻ってないんだね」


「は?記憶?」



知ってたよ。



お兄ちゃんが、あたしを忘れてること。


今度はあたしが傷つくこと。



全部、知ってて、会いに来た。




「久し振り、お兄ちゃん」



いいよ。

忘れていても、いい。


それでも、あたしは「お兄ちゃん」と呼ぶよ。




「あたしは、風都千果。あなたの……風都 誠一郎【カザト セイイチロウ】の、血の繋がった実の妹だよ」




お兄ちゃんの顔色は、冷たく陰ったまま。


思い出した気配は、全くない。



「俺に、妹なんかいない」




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