番犬男子
想像以上に、辛いな。
わかっていたことなのに、悲しくて、寂しくて、ズシンと重くのしかかる。
実はね、ちょっと……ほんのちょっとだけ、期待しちゃったんだ。
もしかしたら、あたしと会ったら、魔法がかかったみたいに思い出してくれるんじゃないかって。
お兄ちゃんはあたしのせいで傷ついて、あたしの記憶だけを封じ込めてしまったのに。
あたしは何を期待していたんだろう。
こんなの、あたしの理想でしかない。
「本当にいないの?」
「ああ」
雪乃という男子に確認され、お兄ちゃんは躊躇なく頷く。
「お兄ちゃんは忘れてるだけだよ!」
頑なに拒まないで。
あたしが思い出させてあげる。
そのために、あたしはここまで来たんだよ。