番犬男子





お兄ちゃんの左の眉尻の上あたりから左の目尻までに渡る、イナズママークのような傷痕が痛々しく刻まれていた。


あれは、“あの日”の傷だ。



痕が残っちゃったんだ……。



でも、前髪は短くて、隠す気はないらしい。


あんまり気にしていなくて、安心した。




「おい、なに笑ってんだ」


お兄ちゃんがぶっきらぼうに声をかけてきた。



え?

あたし、笑ってた?


自覚してなかった。



……ていうか。


今、再会して初めて、お兄ちゃんから話しかけてくれた!




「お兄ちゃん、信じてくれる気になった!?」


「いや全く」


「えー!?あたしは正真正銘、お兄ちゃんの妹なのに」




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