番犬男子
妹だってアピールすればするほど、周りの視線が尖っていく。
完全に、不審がってる。
真偽が不明だからこそ、疑って、怪しんで。
四面楚歌なこの状況を、より深めようとしている。
その中でも、特に鋭い視線を送ってくるのは――。
ホールに漂う空気に敏感になっていたら、いきなり誰かに首根っこを掴まれた。
「へ?」
思わず、間抜けな声が漏れる。
顔だけ向ければ、首根っこを掴んでいたのはお兄ちゃんだった。
「え、ちょ、放してよお兄ちゃん!」
ジタバタと足を動かしても、お兄ちゃんにはちっとも効果がなく、どんどん扉のほうにあたしを連れて歩いていく。
お兄ちゃんは空いている手で扉を乱暴に開けると、ようやくあたしから手を放した。
ただし、洋館の外に。