番犬男子
放してとは言ったけど、追い出せとは言ってないよ!
すぐさま振り返って、洋館内に戻ろうとした。
けど。
「じゃあな、妄想女」
お兄ちゃんは、最後にあたしを突き放す言葉を吐き捨てて、扉を強く閉めた。
バタン、と虚しい音が響く。
やられた。
お兄ちゃん相手に、力で敵うわけないじゃん。
せっかくの再会がこんな形で終わっちゃうなんて、地味にショックだ。
でも、会えた。
お兄ちゃんに、やっと、会えた。
それが、何より嬉しくて。
追い出された悲しさなんか、すぐにかき消されてしまった。
今にも雨が降り出しそうな、雲行きの悪い空の下、強気な笑みを浮かべる。
第一印象は最悪だったかもしれないけど、大丈夫。
今は無理でも、次がある。
「このくらいじゃあきらめないよ、お兄ちゃん」
待っててね。
あたしが必ず、お兄ちゃんの記憶を呼び醒ましてあげるから。