番犬男子
俺もイヤホンをして音楽を聴いて、あの女のことは全て遮断してしまいたい。
なぜか、あの女が、気に入らない。
額の傷が疼いて、無性にイライラする。
「こう、炭酸を強盗犯にぶっかけてさー!」
動作を真似して語る姿が、やけに楽しそうだった。
夏休み中ということでパトロールを増やしたけど、強盗犯を追い詰めたのが、遊馬や幸汰ではなくあの女とはな。
遊馬がここまではしゃぐんだ。
正体がどうであれ、普通の女ではないことは間違いないらしい。
「って、おい稜!聞いてんのか!?」
「…………」
スマホをいじりながらスルーする稜に、遊馬がめげずに声をかけ続けても、一向に稜の意識は向かない。
あれが、稜の基本スタイルだ。