番犬男子





「千果ちゃんと会えてよかったねぇ」



そんなばあちゃんが目を線にしながら、当たり前のように自称妹の名前を口にした。




「妹と仲良くするんだよ」




え?



俺の家族は、父さんと母さんとばあちゃんだけだろ?


妹がいるなんて話、したこともされたこともない。




いや、逆、か……?



俺が、妹はいないと思っていたから、みんな話さなかったのか?

話せなかったのか?





「お兄ちゃん!」


今度は、自称妹が俺を呼ぶ。




……そんなわけ、ない。



ずっと一人っ子として育ってきた。


俺に兄妹はいない。



こいつは、赤の他人だ。




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