番犬男子
「これからよろしくね!」
笑って差し出した手を無視して、黙って自分の部屋に向かった。
けれど、自称妹は恐れることなく、俺の背中に声を投げかける。
「お兄ちゃん、おやすみなさい!!」
俺はやはりその言葉に何も返すことなく、自分の部屋に入った。
扉に寄りかかりながらずるずると下がり、床に座り込む。
あの女、おかしいんじゃねぇの?
いくら冷たく拒んだって、笑顔を絶やさずに距離を詰めようとしてくる。
あぁ、嫌だ。
他人だと呪文のように唱えて、壁を作っても。
妹かもしれないちっぽけな疑念が、壁に穴をあけていく。
「明日、父さんと母さんに電話してみるか」
前髪をくしゃり、かきあげた。
早く、確かめたかった。
『お兄ちゃん!』
そう呼ばれる度に、胸の奥を締め付ける懐かしさは、ただの幻影だと。