番犬男子
□ 逃走
次の日。
昨日より数度高くなった気温。
また1日、終わりに近づく夏休み。
それでも、目覚めは最高だった。
なぜなら、お兄ちゃんと10年振りに、同じ屋根の下で迎えた初めての朝だから!
顔を洗い、栗色の髪を寝癖ひとつ見逃すことなく綺麗に整えて。
お兄ちゃんに「可愛い」って言ってもらえるような洋服を選んで。
おばあちゃんが用意してくれたあたし用の部屋に置いた、等身大の鏡で身なりをチェックする。
よし、完璧。
「朝ご飯できたよ」
扉越しにおばあちゃんの声がして、返事をしながら部屋を出た。
同時に、隣のお兄ちゃんの部屋の扉も開く。
そこから出てきたのは、もちろん、身支度を済ませたお兄ちゃん。
「あっ!」
「げ」
顔を合わせた反応は、正反対。