「はーい」

ひかるが返事をして店先に顔を出すと、そこにいたのは見なれたスーツ姿だった。

「伊崎さん…」

呟くように名前を呼んだひかるに、伊崎はかぶっていた帽子を外した。

「お気持ちは嬉しいですが、私の気持ちは変わり…」

「いえ、違います」

ひかるをさえぎるように、伊崎が言った。

何をしにきたのだろうと思っていたら、
「ひかるさんに謝りたいことがあります」

伊崎が言った。

「私に謝りたいこと、ですか…?」

訳がわからなくて、ひかるは聞き返した。

「お時間をよろしいでしょうか?」

そう聞いてきた伊崎に、
「別に、構いませんが…」

ひかるは返事をした。

途中で誰もこないように「Close」と言うプレートを表にかけると、ひかるは伊崎と向きあった。
< 102 / 115 >

この作品をシェア

pagetop