「…すみません」

呟くように謝った伊崎に、
「謝罪は聞きたくありません」

ひかるは言い返した。

当然の反応だと、伊崎は思った。

自分はひどいことをしてしまったのだから。

「どんな手を使ってでもいいから、ひかるさんが欲しかったんです」

そう答えた伊崎に、
「それで豪くんに近づいて」

そう言ったひかるに、伊崎は首を縦に振ってうなずいた。

ひかるは目をそらすようにうつむいた。

「本当に、申し訳ありませんでした」

もう1度伊崎は謝ったが、ひかるは何も言わなかった。

自分がしたことを許せないんだと、伊崎は思った。

2人の間に沈黙が流れた。

「――豪くん…」

その沈黙を破ったのは、ひかるの方からだった。
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